センター便り 2017年12月

2017.12sentahdayori今年は紅葉が格段に綺麗な気がします。街路の銀杏が朝日に照らされて眩しいばかりに輝く様子は、都内の絶景です。気温が下がるにつれて木々が色づくのは例年の季節行事ですが、今年は11月が冬のように寒かったためでしょう。今年は秋がない、と先月号で書きましたが、確かに今年の11月は晩秋というより初冬の趣でした。寒くなって色づく木々を見ると、厳しい条件でこそ輝く自分たちの存在感を主張しているような気がして、なんだか優しい気分になります。

12月5日は東京女子医科大学の創立記念日ですが、今日、12月1日は東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの創立記念日です。今から35年前、1982年12月1日に当センターは西新宿のNSビルの一角に「リウマチ痛風センター」として産声を上げました。医師4名、看護師2名、放射線技師1名、検査技師1名、事務員6名、全員で14名という小さなクリニックでしたが、クリニックの名称に病名が入っているのは当時では珍しかったこともあって、あっという間に多くのリウマチや痛風の患者さんが受診されるようになり、センターは急速に大きくなりました。1991年には「膠原病リウマチ痛風センター」と改称して膠原病の患者さんも増えましたが、現在では毎日平均380名の患者さんが受診されており、リウマチ性疾患を扱う施設としては日本一の規模になりました。もちろんスタッフの数も増え、現時点で、医師36名を含めて総勢で100名を超える大所帯になりました。この間、多くの優秀なスタッフとともに、リウマチ性疾患の診療のみならず、研究や教育も精力的に行い、研究、教育の成果を臨床現場に生かす努力をしてまいりました。関節リウマチでは、重症の患者さんは2000年の20%から2016年には1.3%に激減し、ほぼ病気が制圧されている寛解状態の患者さんは、2000年の8%から2016年の54.5%にまで増えました。痛風に関しては、血清尿酸値を6.0mg/dl以下に維持することが必要との我々のメッセージが世界標準になりました。難病である膠原病においても、新しい薬剤が導入されて予後は確実に改善しています。

膠原病も関節リウマチも痛風も、各々原因も治療も異なりますが、すべて慢性疾患で、なかなか治癒は望めないという共通点があります。解決すべきことは、まだまだ山ほどあるのですが、医療は確実に進歩しています。今年は昨年より、来年は今年よりも良い医療が提供できると思います。

私は、当センターの開設時から勤務していますが、当時を知る者は私一人になってしまいました。決して平たんな道ではなかったこの35年間ですが、いろいろな過去の教訓を、未来に活かせるよう、そして受診されている患者様に活かせるよう、これからも精進したいと思います。

寒くなるほど美しさに磨きがかかる紅葉のようになってみたい、ふと思いました。

今日から師走。多忙な毎日で、体調を崩されませんように。

2017年12月1日

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿