センター便り 2017年7月 |
梅雨のど真ん中です。日々の暮らしを考えると雨が降らない方が好都合ですが、大切な水資源である雨が降らなければ、我々も含めてすべての生物が干上がってしまいます。雨が少ない空梅雨(からつゆ)の年は、暑い夏に水不足になり、取水制限も行われますし、テレビに映る干上がったダムの様子に暗澹たる気分になります。万物に潤いを与え、命を繋ぐ貴重な慈雨。我々はこの梅雨の季節に感謝せねばなりません。 梅雨の時期は苦手という患者さんの声をよく聞きます。患者さんがつらいのは、湿度が高く、じめじめしているためではないかと思います。ただし、本当にそうでしょうか? 関節リウマチの症状には湿度より気圧が関係すると言う研究成果が発表されています。京都大学で326名の関節リウマチ患者さんの関節所見と気象データとの関係を分析したところ、気圧が低いほど腫れや痛みの指標が悪化することが示されました。湿度も関係するのですが、気圧のほうがはっきり関係するようです(1)。ネットで東京の月別気象データを調べると、7月は平均湿度が73%と最も高いのですが、平均気圧も1008.7 hPa(ヘクトパスカル)と1年で最も低くなっています。つまり、梅雨時にはリウマチの症状が悪化する可能性が高いことは科学的にも正しいようです。 一方で、東京女子医大附属膠原病リウマチ痛風センターで患者の皆様に年2回、春と秋にご協力いただいているIORRA調査によると、リウマチの疾患活動性(病気の強さ)は春に悪く、秋に良くなることがわかっています(2)。これを先程の東京の気圧のデータと重ねると、10月は1016.5 hPa、11月は 1018.1 hPaであり、やはり秋は春より気圧が高いので、気圧が高い秋にはリウマチが良くなることを示しているようです。 人間を含むすべての生物は、地球という大きなゆりかごに育まれています。そして、そのゆりかごのご機嫌次第で、我々は右往左往させられます。地震や台風による自然災害には心が痛みますが、当たり前のように巡ってくる四季の変化も我々の体を微妙に変えているようです。健康管理を考える上でも知っておいた方が良い知識だと考えて、書かせていただきました。7月も後半になると梅雨が明け、真夏になります。体調を崩しやすい時ですので、くれぐれもご自愛のほど。 参考文献 1.Terao C, et al. PLoS One 2014 Jan 15;9(1):e85376. 2.Iikuni N, et al. Rheumatology (Oxford). 2007 May;46(5):846-8. 2017年7月1日 東京女子医大附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿 |