センター便り 2016年12月 |
今年もいよいよ12月を迎えました。定番の愚痴ではありますが、この歳になると月日の経過が早く感じます。おまけに今年は東京で11月に初雪、初冠雪があったことが私の中での季節の移ろいを加速させたのでしょう。しかし、11月下旬にピークを迎える黄葉の銀杏や紅葉のもみじに雪景色や冬空は似合いません。銀杏の黄色、もみじの赤に映えるのは、やはり空の青、それもきんと冷えた空気により澄みきった紺碧の空だと思います。 今月は、我々の身の回りにあふれる医療情報について、少し私見を書いてみたいと思います。 少し前までは、社会全体に広く情報を発信できるのは一部の限られた人々でした。テレビやラジオ、新聞や雑誌でも、意見を述べたりできる人の数は決して多くなかったのです。そしてテレビやラジオ、新聞や雑誌などの記事は、それなりに吟味されていて、それなりに信頼もできました。したがって、人々はお金を払って新聞や雑誌を買い、貴重な情報を得ていたのです。ひとつひとつの情報の価値が高かった時代でした。 ところがインターネットの発達により、誰でも自由に情報を発信し、誰でも自由に情報が得られる時代になりました。しかもほとんどの情報は無料です。情報量は爆発的に増えましたが、逆にひとつひとつの情報の価値は低くなってしまいました。また各々が単なる感想や勝手な意見を書いているだけの情報もとても多く、残念ながら情報の質は保証できません。Googleなどの検索ソフトの恩恵で、我々は無限の情報の中から自分が知りたい情報を探し出せますが、探し出した情報が信頼できるかどうかは、別の話です。 では信頼できる情報はどのようにして探し出せばよいのか。 ひとつの方法はその情報が信頼できる人や組織から発信されているかどうかです。発信元の信頼性が、そのまま情報の信頼性につながります。病気に関してはまさにそうで、ある病気についての情報を得たければ、その病気のことを本当によく理解している人や団体からの情報を使うべきでしょう。その情報を理解したうえで、いろんな人々の意見を参考にする姿勢が重要だと思います。こうあってほしいと自分が望む情報のみを集めるのは避けたいものです。 服用する薬剤の情報も、医師や薬剤師からの説明以外にも、いろいろな情報が飛び交っています。最近では製薬会社も患者向けの情報発信を始めるようになってきました。私は患者さん向けのプログラムをいくつか監修していますが、生物学的製剤であるヒュミラを使用中の患者さんに有用なMy Humiraや、同じく生物学的製剤であるアクテムラを使用中の患者さんのお役に立つBelieveなどもあります。それぞれ主治医から患者さんに案内をしていただけるプログラムですので、使用中の患者さんは主治医に相談してみてください。 12月は師走。美容師、調理師や漫才師の方々にとっては忙しい月ですが、医師や看護師が走り回る月にはなってほしくないものです。年末にかけて一層の体調管理をお願いいたします。 2016年12月1日 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿 |