センター便り 2016年11月

2016.11sentahdayori「季節が動いた」という表現がぴったりの、ここ数日の寒さです。衣替えをしたと思ったら、もうコートの出番になりました。もうすぐ関東にも木枯らし一号が吹き、キンと冷えた空気が大陸から日本列島に流れ込むと、樹木の葉っぱが次々と赤や黄色に色を変えていき、街は晩秋の装いに包まれます。

11月になって今年も残すところあと2か月だと思うと、身の回りに手つかずで残されている仕事が気になりだして、焦りの気持ちが強まる気がします。自分で言うのはおかしいのですが、私は比較的時間の使い方を心得ているようで、自分が使える時間とするべき仕事に要する時間を上手く組み合わせています。少しの時間しか使えない時には、いろいろある仕事の中の短時間で済ませられる作業を当てます。そして十分な時間がある時は、じっくり時間をかけたい重要な仕事をこなします。皆さんそうだと思いますが、仕事にせよ趣味にせよ、時間を気にせずに腰を落ち着けて集中できる時は至福の時間です。そのような時間を確保するために、毎日あくせく働いているような気もします。

関節リウマチの治療が過去15年間で著しく進歩したことはこの記事でも何度も書いてきました。新しい薬剤が次々に開発されて、関節リウマチ患者さんを辛さから解放することが期待されています。メトトレキサートや生物学的製剤の登場は、そのような時代を開いてきました。その経過は当センターの患者さんたちにお願いしているIORRA調査ではっきりと示されてきました。

今日はJAK阻害薬と言う新しい種類の薬剤を紹介します。これはリウマチの炎症を抑え、腫れや痛みを抑えると共に骨破壊を防止する経口剤(飲み薬)です。すでに3年前にゼルヤンツという薬剤が発売されて、当センターでも使っています。基本的には関節炎のひどい関節リウマチ患者さんのための薬ですが、注射薬である生物学的製剤と同じくらいかそれ以上に効き目があります。ただし、感染症のリスクが増えるとか、帯状疱疹が出る可能性があるとか、安全に使うためにはいろいろ注意が必要な薬でもあります。

薬剤はどれであっても慎重に治験などを積み重ねてから厚生労働省が認可し、発売されるものですが、やはり安全性には注意が必要で、新しい種類の薬剤はその価値が定まるまでやはり時間がかかります。このJAK阻害薬もそのような経過をたどっていますが、3年間の使用経験で安全性情報も集まってきましたので、使い方もだいぶわかってきました。今後は処方も増えると考えています。関心のある患者さんは主治医にお尋ねいただくと良いと思います。

晩秋の象徴でもある紅葉や銀杏を見ると、なぜか心が落ち着く気がします。ただし、暖かい服装でお楽しみください。くれぐれも体調を崩されませんように。

2016年11月1日

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター  所長  山中  寿