センター便り 2016年4月 |
4月を迎え、膠原病リウマチ痛風センター前の桜も満開近し、いよいよ春です。4月1日と言うと、エイプリルフールですね。この日だけは嘘をついても許される日と言われ、その昔は結構面白い行事でしたが、最近はあまり耳にしなくなったように思います。善意のウソだったら騙されてあげても良い、それで人間関係が深まるのなら、とも思いますが、最近では、こんな気の利いた嘘に騙された(笑)、なんて話も聞きませんね。たぶん、皆が気付かないうちに社会情勢が変わったのでしょう。 以前は、一部の人だけが知っていて、多くの人が知らないことがいっぱいありました。だから嘘がつきやすく、多くの人が騙されました。ところがネットが発達し、SNSで情報があっという間に拡散する世の中になった今では、皆が同じことを知っている。だから嘘をついても必ずバレる。だからエイプリルフールでも嘘がつけなくなったのではないかと思います。 また、社会全体の許容範囲が狭くなったのかもしれないと思います。議員の不規則発言が問題になったりしますが、ちょっと気の利いたことを言おうとした結果、揚げ足を取られています。悪意からではなく、善意で説明しようとしているのだから、そんなに目くじらを立てなくても、と思いますが、「許せない」と言う人が必ず出てきて、その人の意見が拡散します。でも、ひとりひとりが他人に対する許容範囲を狭めていけば、遊び心もなくなって、つまらない会話のみが残ります。人に優しくすることは、他者をどれだけ許容するかと同じだと思うのですが、他愛のない嘘も許されなくなっている現在のエイプリルフールに際して、しばし思いを馳せてみました。 4月1日から塩をはじめ、いろいろな物価が変わります。診療報酬も改訂され、医療機関に支払われる医療費が変わります。医療行為や薬の価格などの診療報酬は厚生労働省が全国一律に決めていますが、今回は、生物学的製剤などの薬価は少し引き下げられましたが、在宅自己注射指導管理料の算定の方式が変わりました。その他にもいろいろな医療費の支払いに変更があり、窓口で支払う金額が変わると思います。 そして、診療報酬改訂に伴って、医師が処方できる薬剤が制限されるようなりました。例えば、湿布はいちどに70枚までしか処方できなくなりました。いちどに何枚も貼っていた患者さんは困られるかもしれませんが、それ以上は保険診療で認められないので仕方がありません。また調剤薬局では、自宅に残している薬の残薬数に応じて調剤日数を変えられるようになりました。増え続ける国民医療費に対する対策として、医療を効率化し、無駄をできるだけ削減したいと言うのが改訂のねらいのようです。はじめは戸惑われる方もおられるかもしれませんが、皆様のご理解をお願い申し上げます。 春とはいえ、「花冷え」と言う言葉があるごとく、まだまだ寒い日があります。夜桜見物には絶好の季節ですが、夜風にあたって風邪を引くことがありませんように。 2016年4月1日 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿 |