センター便り 2015年10月 |
関節リウマチは、つらい関節の痛みが続くうちに関節が変形し、最終的には寝たきりになることもある大変な病気です。 しかし、医学の進歩は目覚ましく、過去20年の間に新しい薬剤や治療法が開発されて、かなりの患者さんの病状を軽快に導くことができるようになりました。なかでも我々が「寛解」と呼ぶ、「完治したわけではないけれども、病気が進行しないレベルまでリウマチを治療できた」患者さんがずいぶん増えました。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターでは、患者の皆様のご協力を得てIORRAと言う患者調査を2000年から行っておりますが、開始した2000年では重症(DAS28>5.1)の患者さんが20%、寛解(DAS28 しかしながら、関節リウマチは簡単に完治する病気ではありません。寛解=完治ではないのです。寛解になった患者さんも、その状態を維持し続けなければ、関節炎が再燃し、関節変形が進んでしまいます。したがって寛解になったら、その良い状態を続けることが次の目標になります。寛解に向けた治療(Toward Remission)から寛解の先の医療(Beyond Remission)を考える時代を迎えています。 残念ながら現時点では、治療はずっと必要だと考えざるを得ませんが、寛解に入った患者さんは、良い状態が続けば薬剤を減らすことが可能な場合があります。ステロイドを減らす、MTXの服用量を減らす、生物学的製剤をお使いの患者さんは投与間隔を空ける、などの手段も考えられます。寛解が維持できていることが条件ですが、薬剤の服用量を減らすことができれば、副作用の確率も減りますし、医療費も減らすことができます。なによりも患者さんの心の負担が減ることにつながると思います。もちろん患者さんが自己判断で薬を減らすのは良くありません。勝手に止めてしまうのは絶対にダメです。薬を減らせる状態かどうか、どの薬を減らすのか、何に気をつける必要があるかなど、主治医の先生とよくご相談ください。 このように関節リウマチの治療の進歩は、薬剤や治療法の開発によってもたらされた面が大きいのですが、すべてが薬で解決するわけではありません。もっと関節リウマチの事を知りたい、薬以外にもできることがあるのではないかと考える患者さんも多いと思います。そのような方々のために、私が監修した本が先月に出版されました。 「関節リウマチのことがよくわかる本」講談社、税別1300円 全国の書店やアマゾンなどの通販でも入手できます。お役に立てれば幸いです。 キンモクセイの香りが満ちる季節は安定した気候が続くことが多いのですが、昨今の気象状況では何が起こるかわかりません。くれぐれも油断されませんよう、ご自身の健康管理をお願いいたします。 2015年10月1日 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿 |