センター便り 2015年4月

2015.4sentahdayori今年も桜の季節がやってきました。膠原病リウマチ痛風センター前の桜も満開を迎え、しばしの癒しを与えてくれています。若松河田駅から東京女子医大に向かう人々が、皆さん仰ぎ見て通るのを見ると、日本人はどうしてこんなに桜が好きなのだろうと考えてしまいます。

青い空を背景に、ソメイヨシノ特有のやわらかなピンク色が暖かな春風に揺れる様子は絵になります。約1週間かけて満開を迎え、なごりを惜しむようにはらはらと散る様子が日本人の気質に合っているのだという意見も納得できます。私は、人には桜の花びらと一緒にしまいこんでいる記憶があって、それが多分に情緒的な、時には感傷的なものであることが、桜に投影されているのではないかと思っています。

桜の時期は3月末から4月初め。ちょうど年度替わりのタイミングです。卒業と別れ、入学や就職と出会い、節目の時期にはいつも桜が背景を飾っている。桜を見ると懐かしい情景がよみがえる。そんなことを想います。日本では年度は4月始まりですが、欧米のように年度が9月始まりであったりるすと、桜はここまで日本人好みにならなかったのかもしれません。

4月というと新年度。医療の現場にもフレッシュな新人が入ってきます。新人医師というと、なんだか不安だと思われる方もおられるでしょうから、少し説明しておきます。医師になるためには、まず医学部で6年間勉強して卒業。そして難関の医師国家試験を受けて合格すれば晴れて医師免許が与えられます。しかしこの時点ではまだまだ一人前ではありません。2年間の初期研修でいろんな分野を経験し、その後に専門分野を決めて後期研修医になります。初期研修医や後期研修医には指導医がつき、主として病棟や救急の外来などで診療に当たります。そこで十分な経験を積み、一般の外来診療を任されるようになるのは、医学部を卒業してから5,6年目以降ぐらいになります。当センターは外来診療を担当する部署であり、外来診療は経験豊富な医師が担当していますが、若い医師でも最低5年間の経験があります。最近の若い医師はとても優秀で、よく勉強しています。私なども教えられることも多く、きっと受診される患者さんにも良い医療を提供してもらえるものと思っています。

桜の話に戻ります。膠原病リウマチ痛風センターの前には12本の桜があり、ちょっとした桜並木の風情があります。その一本の桜の根元には、「寄贈 柏崎順子 平成11年5月」と書かれた小さな板が添えられているのをご存知でしょうか。この桜は、平成9年、在職中にご逝去された柏崎禎夫先生(膠原病リウマチ痛風センターの第3代所長)の奥様が苗を植えてくださったものです。その桜がこんなに大きく、こんなに立派になりました。若い医師の教育にとても熱心だった柏崎先生が、この桜に姿を変えて、毎年センターに入ってくる若い医師たちを見守ってくれているような気がして、ちょっと感傷的な気分になりました。

さまざまの事おもひ出す桜かな 芭蕉

暖かくはなりましたが、朝夕は意外に寒くなります。くれぐれも健康にご注意ください。

2015年4月1日 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長 山中 寿