センター便り 2014年10月 |
青い空とキンモクセイの香りに本格的な秋の訪れを感じる時期になりました。最近もっとも驚き、また心を痛めたニュースは御嶽山の噴火でした。今回の噴火は、我々が不動と思っている大地が生きていることをまざまざと思い知らされました。 地球という惑星は、宇宙に浮かぶ単なる岩の塊ではなく、中心部は5,000℃もある熱の塊です。その地熱が地球内部に対流を起こし、プレートと呼ばれる地面を動かしています。日本列島は4つのプレートの境界にできたふくらみのような隆起物であり、その地下には常に大きな力が加わっています。そのバランスのちょっとした崩れで地震や火山の噴火が起こります。火山があるお蔭で美しい風景が眺望できたり、温泉を楽しむことができますが、母なる地球は生きていることを忘れないようにしたいものです。 今月は、当センターの外来で行っている「フリフリグッパー体操」について紹介します。 これは筑波大学院の征矢教授が考案した簡単な体操で、足踏み、腰振り、手の開閉を音楽に合わせて繰り返すものです。当センターの看護師の一人が、これを外来待合室でお待ちの患者さんに楽しんでいただければ、病気に悩む患者さんに有効ではないかと考えて、約2年前から始めました。今では、毎週火曜日、水曜日、金曜日の午前10時からの5分間、当センターの外来待合室が楽しい体操教室になります。当センターの看護師が指導しながら、音楽に合わせてこの「フリフリグッパー体操」を行います。診療をお待ちの患者さんも7割程度の方々が元気に体を動かしておられます。私も診療の合間に参加したことがありますが、運動が終わると拍手が起こったりして、なかなか良い雰囲気です。 もともと体を動かすと脳が活性化し、気分が良くなることが知られています。特にリウマチ性疾患をお持ちの方々は普段からあまり体を動かしていない方も多いので、無理なく簡単にできる運動は是非ともお勧めです。また皆さんで音楽に合わせて楽しく運動することで気分も前向きになり、「よし、これで病気には負けないぞ」という気持ちにもなれるでしょう。実際、「フリフリグッパー体操」に参加した患者さんにアンケートを行うと、「気分がすっきりした」「無理なくできた」「だんだん楽しくなってきた」「肩甲骨のあたりがすっきりした」などの声が聞かれました。このような評判を知って、当センター以外でもこの「フリフリグッパー体操」を取り入れた施設もあるようです。 「落語を聞いた後は関節リウマチが良くなる」という研究をまとめられた先生がおられます。病気があることで沈みがちな気分を楽しい時間を持つことで克服することができればこんなに良いことはありません。もちろん、お薬や手術やリハビリは大切ですが、これらの治療の補助として「フリフリグッパー体操」がお役に立つかもしれません。もし時間が合うようでしたら、是非ともに参加してみてください。 母なる地球の上で生かされている我々です。地球から見れば、ごまめの歯ぎしりのようなちっぽけなものかもしれませんが、私も含めて皆がそれぞれの人生を精いっぱい生きています。病気なんかには負けていられません。 これから朝夕は冷える日も増えます。くれぐれもご自愛あれ。 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長 山中 寿 |