センター便り 2013年11月 |
11月は紅葉の季節。「紅葉狩り」などという風流な言葉を聞くと、心眼が鮮やかな赤に染まるような気がします。しかしながら、今年は台風、豪雨、竜巻と、天変地異に振り回されました。特に今年は台風の当たり年で、台風情報に日本中が右往左往しました。自然の猛威の前に尊い人命も失われました。心より哀悼の意を表します。 改めて考えると、宇宙に漂うわが地球は、地表の70%を水に覆われた水惑星。海水は雨となって地面を濡らし、川となって海に注ぐ循環を繰り返しています。すべての生物にとってかけがえのない水ではありますが、その循環の過程で生じる天災をいかに防止するかが人類にとっての大きな課題です。科学が発達し、台風や豪雨がかなり予想できる時代になりましたが、それでも災害は起こります。地球上に生かされている我々は、科学がどんなに進歩しても、自然に対する畏敬を失わないでいたいものです。 私は、10月の最終週に米国リウマチ学会に参加してきました。膠原病リウマチ痛風センターからも多くの医師が参加した関係で、一部の外来診療をお休みさせていただきました。ご迷惑をおかけいたしましたことをお詫びいたします。 以前も書きましたが、医学の世界では学会と呼ばれる組織が存在し、定期的に学術集会を開催しています。リウマチ学の世界では、日本リウマチ学会(JCR)、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)、アジア太平洋リウマチ学会(APLAR)などがあり、最新の知識や研究、医療技術などについて熱心に発表されます。なかでも私が今回参加した米国リウマチ学会はもっとも大きな会議で、今年は世界中から14,000名もの医師や医療関係者が参加しました。日本のリウマチ学会は、関節リウマチに関する話題が中心になるのですが、米国リウマチ学会では、関節リウマチのみならず、いろいろな膠原病や痛風も熱心に討議されていて、まさに当センターの「膠原病リウマチ痛風センター」と言う名称がドンピシャの学会です。当センターからも11名の医師が参加し、たくさんの演題を発表しましたが、そのほとんどは膠原病リウマチ痛風センターで日々行われている診療の中から得られた知見です。皆様のご協力に深く感謝いたします。 膠原病リウマチ痛風センターにはとても多くの患者さんが受診されますが、私は、そこで得られたいろいろな情報を、当センターに受診しておられる患者さんの医療に還元するだけではなく、日本全国の患者さんにも、そして全世界の患者さんにも利用していただきたいと思っています。そして、地球上の無数の患者さんたちが、少しでも病の苦しみから逃れられるように、少しでも早く快癒できますように、微力ではあります力を尽くしていきたいと思っています。 今回の米国リウマチ学会は、カリフォルニア州の最南端にあるサンディエゴと言う都市で開催されました。サンディエゴは今から30年近く前に私が3年間留学し、リウマチ学の研究をした思い出の地です。サンディエゴはずっと好天気で、まぶしい陽光と涼やかな風を満喫して参りました。 日本もここしばらくは秋晴れが続く予報です。穏やかな気候が続きますことを、皆様の病気が落ち着いていますことを、そして一刻も早く快癒に向かいますことを、こころより祈念いたします。 2013年11月1日 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿 |