センター便り 2013年1月

2013年は厳冬の中で年が明けました。昨年末から選挙や政権交替で何かとあわただしい世相でしたが、お正月はゆっくりお休みになれたでしょうか?新しい年が、地球上のすべての人々にとって昨年よりも良い1年でありますことを願っています。

先月、NHKの「ためしてガッテン」に出演した影響で、当センターの新患外来がとても混み合っております。私は急遽、新患外来を増やして対応しておりますが、それでも限界があり、なかなか予約が取りづらい状況になっております。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、当センターで新患外来を担当している医師は、皆さんエキスパートですので、誰が担当しても大丈夫です。安心して受診されてください。

番組を観られた方々は、関節リウマチの「超早期」という言葉が何度も出てきて印象に残っておられると思います。以前は症状が出てから大体2年ぐらいまでを「早期」と言っていましたが、以前よりも治療が進歩し、また早期診断が可能になり「早期」のとらえ方が変わりました。今では症状が出てから6か月ぐらいを「早期」と呼ぶことが多くなりました。どんな病気でも早期発見、早期治療は重要で、これは関節リウマチに限ったことではありません。しかし、以前は関節リウマチに対して十分な治療法がなかったので、早期に発見できても、有効な早期治療ができなかったのです。今では有効な薬剤がたくさん開発されて、また早期診断も可能になっています。早期に治療すれば関節が壊れる前に病気の進行を止められる、そんな時代になっているのです。

ただし、誤解がないようにしていただきたいことが二つあります。ひとつは、関節リウマチの状態は患者さんごとに異なります。症状が出始めた頃から全身の関節炎がとても強い人は早期から強力な治療が必要ですが、関節リウマチの患者さん全員に強力な薬物治療が必要ではありません。適切な治療法は患者さん個々で異なります。もうひとつは、以前から関節リウマチを患って関節が変形してしまった患者さんでも、現時点から有効な薬物を使うことで日常生活も楽になりますし、これ以上の変形を防ぐことも可能になります。「早期」「超早期」と言うと、早く治療しないと手遅れではないかと思われがちですが、そうでない場合も多いのです。あくまで患者さん個々の病状の把握が大切だと思います。

今年は寒い冬です。体調管理には十分すぎるほど留意して、ご自愛ください。

2013年1月1日 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿