センター便り 2012年6月

今年はどうも天候が不順で、竜巻といいゲリラ豪雨といい、今までの日本とは違う気候帯に入ってしまったような感があります。地球は温暖化していると言われていますが、その副産物の一つなのでしょうか?

先日、香港大学に招かれて香港で講演をしてきましたが、その時に中国語ではリウマチ科を「風湿科」と表現していることを知っていささか驚きました。「風」は、痛風や破傷風にみられるように神経系と考えられる病気一般をさす言葉ですから、昔からリウマチ=「風湿」は湿度と関係がある神経の病気と考えられてきたのでしょう。6月下旬から日本は梅雨に入ります。湿度の高い梅雨に入ると関節リウマチの症状は悪化するのでしょうか?

関節リウマチの症状には季節変動があることは、患者さんのみならず医師の多くが気づいていることです。実際、米国でもリウマチ性疾患の患者さんの症状に季節変動があることが報告されていますが、痛みの感じ方などの主観的な症状が変動するだけであるとの意見でした。

では日本ではどうでしょうか?当センターではリウマチ患者さん全員を対象に春と秋にIORRAという患者調査を行っていますが、患者さんたちの病状を解析すると関節リウマチの病状が春に悪化し、秋には改善することがわかりました。木の芽時とよばれる5月には精神的にも不安定になる場合があることが知られているので、患者さんの自覚症状が変動するのかと最初は思いましたが、驚くべきことに赤沈やCRPなどのような血液検査の数値まで春に悪く、秋に改善していることがわかりました。なぜこのような季節変動が起こるのかいろいろ考えてはいるのですが、まだきちんと説明できる結論には達していません。どなたか良いアイデアがあればお教えいただきたいと思っています。

これから日本は梅雨に入ります。前述のごとく中国語で「風湿」と呼ばれる関節リウマチの患者さんにはつらい季節ですが、体調を崩されないように、くれぐれもご自愛ください。

2012年6月1日 
膠原病リウマチ痛風センター所長 山中 寿