センター便り 2012年2月

当センターはリウマチ性疾患と呼ばれる一群の病気を専門的に診療しています。リウマチ性疾患には多くの病気がありますが、その原因は病気によって異なります。 たとえば膠原病や関節リウマチは免疫の病気、痛風は代謝の病気です。今日は、免疫について少し説明いたします。

免疫とは、体を外界から守る防御システムです。我々の体は常に様々な細菌やウイルスにさらされています。実際、空気中にも食品中にもさまざまな病原体が潜んでいますが、それを害のあるものと認識して排除する働きが免疫です。現在インフルエンザが流行っていますが、インフルエンザが体内に侵入してもインフルエンザの働きをなくすような抗体が十分にあれば発病しません。
インフルエンザワクチンはこのような抗体を体内に増やして予防する、発病しても軽症で済むように作用します。つまり免疫は外界からの侵入物に対して作用し、排除する仕組みです。
ところが、膠原病や関節リウマチでは、この免疫が異常をきたし、本来であれば免疫システムが攻撃しないはずの体の一部を攻撃してしまうのです。関節リウマチでは、関節の滑膜組織が免疫システムにより攻撃されて関節に炎症が起こり、その結果として関節が壊れていきます。膠原病の一種である全身性エリテマトーデスでは、皮膚や腎臓など多くの臓器が免疫システムに攻撃されてしまいます。多発性筋炎では免疫システムが筋肉を攻撃して筋肉が委縮します。
つまり、膠原病や関節リウマチでは、免疫の向かう方向がおかしくなって体のなかを攻撃しているのです。
免疫の向かう方向を是正することができれば、このような病気が治療できるはずですが、どうしてそのような異常が起きるのかはまだ十分にわかっていませんので、このような治療法はまだ実現していません。現在行われている多くの治療法は、この違う方向に暴走している免疫自体の力を弱めて、被害を少しでも食い止めようとするものです。つまり、「免疫抑制」がこのような病気の治療の基本です。
膠原病や関節リウマチでは、ステロイドやメトトレキサート、生物学的製剤がよく使われ、病気の鎮静化に非常に効果がありますが、その効果の多くはこの免疫を抑止することによってもたらされています。よく、「免疫力をあげると良い」と思っておられる方がおられますが、膠原病や関節リウマチの治療では逆の結果になることをご理解いただきたいと思います。
ただし、免疫抑制治療を行うと、本来の免疫の作用でもある外界からの病原体に対する抵抗力も少なからず低下する可能性があります。また本来は害のないような弱い病原体が体を害する「日和見感染」なども起こることがあります。したがって、このような疾患で治療を受けている人々は、感染には十分に注意していただき、ワクチンを接種する、人混みではマスクをつける、うがい、手洗いを励行するなどの注意が必要です。また体力を維持するために栄養を十分に取っていただくことも大切です。これらの具体的な注意については別の機会に書きたいと思います。
今年はことのほか寒い日々が続いているようです。お風邪を召しませんように、十分にご注意ください。

 

2012年2月1日
膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿