センター便り 2019年4月

sentatayori04今年もようやく春を迎え、旧膠原病リウマチ痛風センター前の桜は、今年も綺麗に咲いてくれました。

私も日本人のひとりとして桜は大好きで、毎年この時期には桜の話題を書いてきました。なぜ日本人はこんなに桜が好きなのか? 寒い冬の終わりと楽しい春の訪れを告げてくれるから、桜の咲く時期が卒業、入学、退職、就職などと重なって別れや出会いを投影しているから、控えめな薄紅色が奥ゆかしさを感じさせるから、華麗に咲いてはらはらと散りゆく、その潔さが名残り惜しさを引き立たせるから・・・。日本人特有の美学を具現化し、心の琴線に触れる、何と情緒的な花なんだろうと思います。

そして、この4月末。桜が散り、私の中での大事業であった日本リウマチ学会総会開催も終わり、そして平成が幕を閉じるこの節目の時期に、私も37年間在籍した東京女子医科大学を退職します。私は、「リウマチ痛風センター」が開設された昭和58年1月に東京女子医科大学に赴任しました。当時、私は28歳。それからの37年間、私は東京女子医大一筋に歩んでまいりました。多くの医師や医療スタッフと共に、数えきれないほど多くの患者さんと出会いました。どの人との出会いも、私の人生の糧となり、多くのことを学ばせていただきました。そして昨年5月に、膠原病リウマチ痛風センターが東京女子医大病院に併合され、新しい体制がほぼ確立し、1年を経過した今、東京女子医科大学における私自身の役割も節目を迎えます。今後は、このセンターを優秀な後進の医師たちにお任せします。4月末で「平成」が終わり、5月からは「令和」が始まります。新しい「令和」時代の、新しい膠原病リウマチ痛風センターの更なる発展のために、今後は裏方としてお手伝いいたします。

散る花を 惜しむ心や とどまりて
また来ん春の たねになるべき (西行)

残念ながら、この「センター便り」も、今回をもって最終回となります。始まりは2011年8月、東日本大震災の後に、受診中の患者さんへのお知らせとしてホームページに掲載し始めた短いコラムでした。それが今月まで毎月、8年近くも続けられたのは、患者さんや多くの方々からの励ましがあったからにほかなりません。私自身も書くことによって、ずいぶん成長したようにと思います。関心をお持ちいただける方は、今年1月に発行した「リウマチ歳時記」(幻冬舎、1200円)にまとめて掲載しておりますので、是非ご一読ください。

本当に、永らくお世話になりました。皆さんのご健康とご多幸を祈りつつ、稿を終えます。

2019年4月1日

東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター 教授 山中 寿