センター便り 2019年3月

sentatayori03まだまだ寒い日が続きますが、季節が春に向けて動き出しているのがわかります。昨日は雨模様でしたが、冬の寒々しい氷雨ではなく、柔らかな水滴が降り注ぐ微雨には、心をうきうきさせる何かがありした。

何事によらず物事が良い方向に向かっているときは、心が軽くなります。春の訪れを感じるとき、仕事が順調に進み始めたとき、人との関係が改善していくとき、子供や孫の成長を見たとき、景気が上向いているとき、そして病気が快方に向かっているとき。よくこのように考えます。物事が悪い方向に向かっているときは自らの行いに反省し、良い方向に向かっているときは他人に感謝しようと。でもこのような心の持ちようは、実際には俗人にはなかなかできることではないようで。はい。

今年は春の訪れが早く、桜の開花も早いとの予報が出ています。これを聞いて、私は少しホッとしています。実は、来月、4月15日~17日に京都国際会議場で、私が会長を務める第63回日本リウマチ学会総会が開かれます。約7,000名の医師や医療関係者が集まる大きな会ですが、何しろ4月の京都です。観光客がいっぱいで、なかなか宿がとれない。特に桜の時期とぶつかると、大混乱が予想されます。今のところ京都の桜開花予想は4月3日。4月15日ごろになれば、桜も散って桜見物の観光客も減るのではないかと、ちょっと安堵した次第です。

例年、日本リウマチ学会総会では、国内だけでなく海外からも多くの研究者が集まり、リウマチ性疾患に関する最新の研究成果を報告しあいます。そして医学を進歩させ、治療も進歩します。当センターからも多くの医師が参加しますので、4月15~17日は外来の休診が多くなります。予約を取られる際にはご注意いただきたく存じます。

今年のリウマチ学会は「夢を語ろう」というテーマを掲げました。関節リウマチをはじめとするリウマチ性疾患の診療は、この10年間でずいぶん進歩しました。当センターで実施しているIORRA調査でも寛解状態になった患者さんは57%に達し、ステロイドを使っている人が30%を切りました。しかしながら、寛解は完治ではありません。患者さんの望むものは治癒、病気から逃れられること、だと思います。「関節リウマチが完治すること」は、残念ながら現時点では夢です。しかし、夢を持たねば実現はありません。夢を持ち、それを実現する努力をすることで、夢が現実になる。世界は夢が実現した事例で満ち溢れています。目先の小さな目標ではなく、大きな夢を持つことが必要なんだということを語りあい、多くの研究者が、夢の実現に向かって踏み出せるような学会にしたいと思っております。

このセンター便りも、2011年8月から書き始めて、7年半になりました。来月が最終号になります。以前もお知らせしましたが、センター便りをまとめた「リウマチ歳時記」を今年1月に幻冬舎から出版いたしました。書店やネットでも買えますので、是非ご一読ください。

春の到来まであと少し。くれぐれもご自愛ください。

2019年3月1日 東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター 教授 山中 寿