センター便り 2018年10月


sentatayori9台風24号が近づく中でこの記事を書いています。今年は台風の当たり年。いくつもの大きな台風が日本列島を駆け抜けて、大きな災害を起こしました。豪雨や強風による被害を見るにつけ、我々が何ともできない自然の驚異をまざまざと見せつけられます。

台風ひとつは原爆100万発に相当するエネルギーを持っているとのことですが、その大きなエネルギーを、何とか利用できないものかと思います。そこで、ネットで調べてみると、やはり同じことを考えている人がたくさんいて、さらにそれを実現しようとしている企業があることを知り、驚きました。台風のような暴風でも壊れず、効率よく風力発電できる装置が開発されていて、将来的には、タンカーのような大きな船で台風の中に突入していって、そのエネルギーを電気に変えることも考えられているようです。その他にも黒潮や親潮のような海流を利用して発電するとか、温泉や火山の地熱を利用した発電なども開発されています。考えてみれば、地球の中心部は6000℃以上ある熱の塊であり、その熱エネルギーにより地震が起きたり、火山が噴火したり、大陸が移動したりします。そのエネルギーたるや莫大な量です。石油や石炭のような化石燃料はいずれなくなります。これらの自然エネルギーを有効に活用することは、ある意味で地球規模での自給自足であり、地球と人類との共存共栄かもしれません。そんな時代がきっと来ると思います。

なぜならば、技術は不断に進歩します。現在では不可能と思うことも、10年後には実現しているかもしれない。10年後は無理でも100年後には実現しているかもしれない。科学や技術革新はそのようにして進化してきました。これからは、以前は夢物語であった人工知能(AI)がいろんな分野に取り入れられる時代が来ます。医学も例外ではありません。診断、治療方針の決定から始まり、新しい薬剤の開発や、看護、介護など、いままで我々医師を含む医療関係者が行ってきたことをAIが担当するようになります。まず進歩するのは画像診断だと思います。自動運転の自動車で開発されたシステムを使って、胸部レントゲン写真で肺がんを発見するとか、皮膚の腫瘍の写真から良性か悪性かを判断するシステムなどの開発が進んでいます。AIの進歩で産業構造全体が変わることは確実ですが、我々医師の業務内容も大きく変わることは確実だと思います。我々も、医師にできてAIにできないことは何か、今からよく考えておかねばなりません。

エネルギーに関しての余談ですが、スポーツジムでは自転車(エアロバイク)をこいだり、いろんなマシーンを使って運動しますよね。その時に生じたエネルギーを自家発電に回して、そのジムの照明や空調に使えばいいのに、と思ったりします。電気が暗くなってきたら、みんなで頑張って、必死に自転車をこぐ。すると照明も明るくなるし、体重も減るし、と一石二鳥になるような気がするのですが。

台風で大きな災害がないことを祈り、台風一過の秋晴れを待ち望みたいと思います。

2018年10月1日

東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター 教授 山中 寿